油彩について


「油絵って興味あるけど難しそうで…」と思っていらっしゃる方が多いようですが
どのような画材でも表現方法や追求して行くにつれて難しさの壁はありますけど
油彩画は手順を追って描けば案外簡単に描けますし、やり直しがきくんですよとお答えすると驚かれます

実験好きや研究好きの方はもちろん、そうでない方もアドバイスすることにより
みるみる上達していく様子がこちらも観ていて楽しく思いました

下記にて油彩画の画材について少しずつ解説していきます

油絵具は顔料と固着剤としての乾性油と天然樹脂とを練ってつくられています
他の絵の具と違い乾いても顔料の粒子は油膜に覆われています

乾燥するスピードは3~7日程と色によって異なります
ただし、このラベル等に書かれているのは表面の接触乾燥のスピードですので
以降も中の絵具は呼吸し徐々に乾燥をしていきます
しっかり乾燥したと云えるのには数十年以上かかります
乾燥を早める方法はたくさんありますが方法を誤ると

滑って絵の具が乗らなくなったり剥離や亀裂等の原因となります

油彩用オイル・メディウム

油彩画はチューブ絵具自体の油分でキャンバスに乗りますが、
そのままでは乾くに従いツヤは無くなり剥離してしまいます
様々な効果のあるオイルを調合して筆に含ませて絵具を溶いたり、
画面に塗布して粘り気とツヤと乾燥のコントロールをしながら描いていきます
下記でオイルの分類と特徴を…

揮発性油
絵具や他のオイルを薄められる、とてもサラサラした透明のオイルです
松やにを精製したテレピン(ターペンタイン)と石油系のペトロールがあります
テレピンの方が揮発、溶解とも多少強いです
描く手順の初めに行うおつゆがき(少量の絵具を多めの揮発油でシャバシャバな状態で描く)に良く使われます
  ※注意ポイント※

混ぜた絵具は揮発(乾燥)が速く、ツヤが全くありません
これは定着力も無くなっている状態ですので
完成間近まで揮発性油を使ってしまうと剥離してしまいます


乾性油
油絵具の固着剤成分として入っている基本的なオイルで
揮発性油より見た目は少し黄みがかっており、ツヤととろみがあます
とても種類が多いので基本と代表的なものを…

基本乾性油にアマの種子を搾油したリンシードとケシの種子のポピーオイルがあります
リンシードは最もポピュラーな乾性油で固着力、塗膜強度とも強いですが、経年黄変します
ポピーオイルは固着・塗膜とも劣りますが黄変しにくいので淡い色味の絵具にも使えます

リンシードを加熱加工したスタンドリンシードは、

蜂蜜のようなとろみがありとても強い塗膜と光沢が特徴です
筆後を残したくないような時にも使用します
こちらは経年黄変しにくいです

サンシックンドリンシード
サンシックンドポピーは、
とても強い塗膜と陶器のような光沢が特徴で絵具に透明感を出し乾燥も早くなります
こちらも筆後が残りません
テンペラ技法に用いられる事が多いです

より光沢と透明感が強いものにベネチアテレピン
があります
とても粘りも強いで基本的には揮発性油と他の乾性油も混ぜて使用します
こちらは多少乾燥が遅く、黄変します

調合溶き油
上記に紹介したオイル類を制作手順に応じて組み合わせていきますが、
初めての方にも失敗なく使えるのが調合溶き油で、
ペンチングオイルと言います
最初から仕上げまで1本で描くことも可能です
各社、乾燥スピードや光沢の強さ等の異なる数種類が作られています
 

ワニス
仕上げ段階で絵具に混ぜて使用するものと、描き終わってから画面に塗布するものがあります
使わなくても制作は可能ですが、長期間保管をする場合には不可欠です
油絵らしいつややかな画面をつくるだけでなく、作品の保護のためにも必要となりますので
画面トラブルを防ぐためにもちょっと気に留めておくと良いですよ

描画用ワニスの代表的なものにパンドルがあります
ダンマル樹脂とペトロールとポピーオイルが主原料で乾燥が速く光沢と透明感をもたらします

制作に長期かかると画面にツヤのばらつきや、絵具が乗りにくくなる事があります
その時に使用するのがルツーセです
薄く画面全体に均一にひくことでツヤが出て、上からの描写もしやすくなります
液体とスプレータイプもあります


完成後に画面保護のために全体に塗布するものがタブローです
絵具の描写面をほこり等の汚れからカバーする目的です
 ※注意ポイント※
絵具の呼吸を止めてしまいますので、完成から半年以上経過してから使います
保護力は劣りますが接触乾燥していれば使えるタイプもあります
塗布した作品が長期経過し画面がくすんだ場合は

テレピンを含ませた布で軽く拭き落し、新たに塗布します
塗布すれば汚れないのではありませんのでご注意を


お水で描ける油絵具

「油絵は興味はあるけどにおいがね…」という方には近年登場したお水で描ける油絵具がオススメです

下の写真は水溶性の乾性油で練られた油絵具でホルベイン社から1995年より販売されている『DUO
単体では低臭なうえに油絵具の様にゆっくり乾きます(速乾メディウムもあります)
専用のオイルやメディウムなら使っても筆は水で洗えます
水彩筆にお水多めで水彩風にすることもできますし、水彩とアクリル絵具と混ぜて使う事も出来ます
30%程度の油絵具と混ぜて使うことも出来ますが、その場合は油絵具用の筆洗油を使ってください

厳密には油絵具ではありませんがクサカベ社の『アキーラ』も油彩コーナーで扱うことが多い商品です
水性アルキド樹脂と顔料で出来ており、アクリル絵具に近しい性質で低臭です
油彩の上から描く事が出来るのが最大の特徴です
通常のアクリル絵具は絶対に油絵具の上から使わないでください
ひび割れや剥離の原因となります